白夜

せかいがいちばんただしいとおもう生き方

petty.1

僕はあの子の何がすきって、大切にしてくれるところ。


3/10
ハッピーバースデイ、あいするひと 生まれてきてくれてありがとう あなたがいるから、わたしはあのとき地獄を見たけれどいま生きていられるのだと、そう思ってる。たとえあなたを愛することで、みにくい感情にかられふたたび地獄を見るとしても。
バイト六連勤、五日間早朝。 しにそう。 今日は彼女の誕生日だってことを支えに頑張ってきた。あしたでおしまい。一日休んでまた二連だけど。
わたしより高い背、長い髪、小さな手。 可愛らしい彼女を好きになった理由を訊かれてもうまく言えないけど、わたしに欠けたものを持っているひとだと思ってる。彼女のやわらかな雰囲気に触れると、それだけで満たされてしまう。そんなところが、大好き。 彼女を好きでいること、言えるのがここだけって、少し寂しいな。何度好きだって言っても言われても、彼女のそれとは意味が違う。それなのに、ある友人に向けられる彼女の好意が、ひどく羨ましい。
そんな彼女がはたちになった。 まるで通過儀礼のように彼女をお酒の場に誘ったけれど、彼女と飲むのは少しこわい。かくしてる感情すべてを、知られてしまわないか。 そんなわたしを知っても、彼女はまだ好意をくれるだろうか。友人としての好意を。


3/11
言うべきことは他にもある。 しかし今日はそれどころじゃなかった。 バイト六連勤の最終日、ピークに焦っていたのと疲れていたのと。冷凍ケースから冷凍品を取ろうと手を差し込んだのは、冷凍ケースでなく百八十度の油の海だった。熱さを感じるより液体だと違和感を感じて速攻手をあげて冷やした。 そこから二時間冷やしながら誤魔化して、バイト上がりに急患受け入れの皮膚科を探して駆け込んだ。 労災、と。 おお、火傷も労災もはじめてだ。 指定外病院とのことで全額自費診療だったわけだが、一万を越えた。皮膚かで一万。カード支払い前日だったから持ち合わせはあったのだが、いやいや、高い、高すぎる。そうか、それほどのことなのか。
魔法のシートを貼ってもらい、魔法の薬を貰いーー実際先生がそう言っていた、魔法だとーー明日来てね、と見送られた。はじめての火傷はなんだか想像以上に混乱して、疲れて、でもどこか冷静だった。 店長、変わったばかりなのに迷惑をかけて申し訳ないな。 疲れて早々に寝た。考えるには煩わしいことばかりだ。


3/12
意識するほどではなかったが、冷やしていないと続く痛みからか、よく眠れず起きたのは朝五時。トドメの接吻の最終回を観たりしっかり朝ごはん(左手が機能しないために冷凍食品)を食べたり、ゆっくりした時間を過ごす。 火傷から二十四時間後くらいに来て、と言われていたので予定の三十分くらい前、10:30に着くように行けば、午前診療の受付が既に終わっていた。いや、嘘だろう。 一度家に帰り、本を読み、少し寝て、早めに家を出て洋服を観て回り、ふたたび皮膚科へ。 シートを剥がしてもらいながら先生がひとこと。
「昨日来ずに今日来てたら、もうピアノは弾けなかっただろうね」
うそ、そんなにだったのか。 魔法の薬のおかげで腫れは引き、水ぶくれが数個残る程度に。一日で凄い、人間って凄い。少し感覚が気持ち悪いけれど、油の海に手を突っ込んだわりに軽症みたいだ。 明日も早朝バイトが入っていたのだが代わってもらい、明後日から復帰することにした。しばらくは、こわいだろうなあ。
それから、図書館へ寄って未返却の図書を読んで返し、新しく借りてきた。読むのが楽しみだ。



そんなことがあり、改めてピアノのことを考えたのだけれど、やっぱりなくしたくないと思った。ピアノの欠けた人生などひとかけらも想像ができない。 きっとわたしが考えていたより、ずっとずっと深く、奥の方で、きつく交わってもうひとつに成り果てているのではないだろうか。だから余計に、将来を憂いてしまう。
あとひとつ。 火傷したあと母に連絡をしたのだがあいにく仕事中で、代わりに父に連絡をいれた。 火傷をした、労災だから少し金銭的に厳しい。 すると想像以上に心配された。正直なところ家庭の事情により父のことをあまり信用していないのだが、思っていたよりずっと愛されているのではないかと、ぼんやり感じて、少し泣いた。
貰った体だろうが自分のものだ、どうなろうとわたしの勝手だろう。そう思って生きていたけれど、それでも心配はされる。不必要な傷など、いらないに決まっている。 ちゃんと、大切にしなきゃね。